Diary 2004. 10
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10月29日 (金)  徒手切片

先週,ひさびさに傘と柄のあるきのこの顕微鏡観察をしたが,その際に切片づくりに難儀したので,今日は徒手切片づくりの練習をした。ニワトコのピスを用いて,切片を作る練習である。日常的に使っていないと,こういう作業はすぐに下手になってしまう。ホコリタケ類や微小菌類の観察ばかりしていると,切片づくりが不得意になってしまうので,いざ,というときに困りものだ。やはり,日頃からいろいろな菌を,面倒がらずに観察することが大切だと思った。


10月28日 (木)  アガリクス

筑波大学構内のヒマラヤスギの樹下には,腐植が堆積してマットのようになっている。このマットの上に,ハラタケ属のきのこが菌輪を描いて生えていた(画像1)。ハラタケ属は学名はAgaricus,読み方はアガリクスである。きのこにあまり詳しくない人ときのこ採りに行って,ハラタケの仲間が生えていると,わたしはつい「あ,アガリクスだ」というようなことを言うが,彼らは「アガリクス」と聞くと,例の健康食品の「アガリクス茸」をイメージしてしまうらしく,かなりびっくりした顔をする。確かに,法外に高い健康食品の原料がそこら辺に生えていればびっくりするだろうが,そもそも「アガリクス」というのは,ハラタケ属の学名であって,Agaricus blazei(最近,この名前はシノニムになる,とかいう論文がでていたような気がするが,定かではない)一種のみを指す名称ではない。したがって,健康食品の商品名に「アガリクス茸」と用いると,「ハラタケの仲間なら何でもいいわけね」というような印象を受ける。なんだか,言葉の使い方が間違っているような気がしてならないし,いろいろと誤解を招くような商品名だと思う。

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10月27日 (水)  地震

先日,地震が発生した新潟県中越地方は,春先になると昆虫採集に山菜採り,さらに盤菌類の観察のために,ほぼ毎年訪れている地域である.特に,震源に近い小千谷市,長岡市や見附市などは,小学生の頃から毎年来ているので,なじみ深い地域であり,今回の地震も人ごとではない.ちなみに長岡市や小千谷市の里山には,春先になるとイカリソウ(画像1)やイチリンソウの花が林床に咲き乱れ,アネモネタマチャワンタケやエツキクロコップタケ,その他名前のわからない盤菌類が結構発生するし,ギフチョウの姿も多く,気持ちがいい場所である.今日,コンビニに行ったら地震用の募金箱がおいてあったので,ほんのちょっとだけ寄付したが,なんとか復旧されることを願いたい.

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10月26日 (火)  謎の講演依頼

朝,大学でメールボックスを開くと,"…I would like to invite you to participate…"という文面で始まる,国際会議での講演依頼のメールが来ていた。「おぉっ!」と喜び,しかし,しょうもない学生が依頼講演なんかしてもよいものかと思いつつ,さらに読み進めると,「あれっ???」と,はてなマークが3つくらい頭の中に浮かんだ。それは,"9th World Multi-Conference on Systemics, Cybernetics and Informatics"という国際学会での講演依頼だった。人工知能や情報科学がどうのこうのと書いてあるので,工学系の学会らしい。少なくとも,わたしの専門分野とは全く違う学会である。ところが,"We are emphasizing the area of Applications of Informatics and Cybernetics in Science and Engineering, mainly Applications in Biology and Medicine which are related to your specific area"だそうである。たしかにわたしは生物学の研究らしきことをしているが,「情報科学や人工知能の生物学への応用」などという研究をした記憶はない。第一,地味な菌の分類屋に,このような学会で講演させて,何かメリットがあるのだろうか。おそらく,誰か別の人と勘違いして送ったのに違いない。しかし,Kasuyaという苗字を持つ研究者は,世の中にそれほど多くないはずだから,よっぽどいい加減に検索したのか知らないが,どうしてわたしのところに送られてきたのか,謎である。


10月24日 (日)  東海村のきのこ(2)

茨城県東海村の海岸クロマツ林には,腹菌類以外のきのこ類も多数見られた.テングタケ属の毒きのこのほかは,チチタケ属のきのこをはじめとして,シモコシ,ヌメリイグチなどの食用菌が多かった.小型のきのこ類では,Cystoderma属の一種(画像1),Phaeromarasmius属の一種(画像2)やStropharia属と思われる一種(画像3)などの,いくつか気になるものがあった.

東海村の菌類調査は,きのこ類を対象として今後,3年間かけておこなわれる.3年間で東海村のきのこ目録を作るわけだが,このためには,かなりがんばって調査をしなければならない.採集も頻繁にする必要があるし,同定も休まずに続ける必要がある.標本類はとりあえず大学で保管し,ゆくゆくは茨城県の博物館に寄託予定である.この標本作製と整理の手間もかかる.きのこ担当の調査員はわたしだけなので,ボランティアで誰かに手伝ってもらいながら作業をしないと,3年間の期間があるとはいえ,精度の高い結果を出すのはなかなか難しいかもしれない.

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10月23日 (土)  東海村のきのこ: コツチグリなど

今日は茨城県東海村の菌類調査の日だった.東海村豊岡の久慈川河口付近のクロマツ林では,いろいろなきのこが採集された.腹菌類では,コツチグリを初めて採集することができた.話には聞いてきたが,やはり,ツチグリとは子実体の外見が明らかに異なり,別種であるというのもうなずける(画像1).また,ホコリタケ科の菌も多く,かなりの数の標本が採集された.画像2の菌は,外皮が特徴的である.このほか,砂浜にはスナジクズタケ(画像3)が群生していた.

今日は休日ということもあって,たくさんの地元の人が,村内の海岸クロマツ林にきのこ狩りに訪れていた.目当てはシモコシやハツタケのようだったが,中にはオウギタケやヌメリイグチを食用に採集している人もいた.東海村では,シモコシはキンタケ,オウギタケはジョロウタケと呼んでいるとのことであった.地元の人の一番のねらいはシモコシ,次がハツタケやアミタケであり,ヌメリイグチやオウギタケなどは,生えていれば採集する,という話だった.犬の散歩がてらきのこを探す人や,本格的に鎌を持って砂の中を探る人など,いろいろな地元の人に話を聞く機会を得たが,現在でも東海村の人々の生活にはクロマツ林でのきのこ狩りが深く根ざしているようだ.

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10月21日 (木)  service unavailable

今日朝から午後15時頃まで,サーバーがダウンしたため,本webサイトにアクセスするとService unavailableの表示がでてしまう状態になっていたが,15時過ぎに復旧したようで,正常に表示されるようになった。ここのところ,アクセス解析のデータが消えたり,メイルの受信トレイから2ヶ月分のデータが吹っ飛んだり,いろいろなものが消えているので,ちょっと嫌な気分だったが,正常に復旧されたようなので一安心である。

なお,10/19のLepiota calcicolaの和名に関する「ささやき」について,浅井郁夫氏Webサイト内の「今日の雑記」10/21の記事中でご紹介いただいている。今後,この件について,どこに和名変更の記事を掲載するか,検討しなければならない。菌学会ニュースレターあたりは,候補の一つになるだろう。


10月20日 (水)  転倒事故

またもや台風が接近している。困ったものだ。しかし,その影響できのこは最近,発生状況は良好なので,一概に困ったものだとはいえないのだが。

今日は,午前中は山階鳥類研究所で打ち合わせをして,午後は動物衛生研究所で蛍光顕微鏡を用いた腹菌類の観察をした。午後6時過ぎに動衛研の門を出ると,すでに雨風ともに強くなり始めていた。そして,車に乗ろうと駐車場に向かった瞬間,水たまりに足を滑らせて,つるん,と,転んでしまった。持っていた鞄の中には,大切な菌類標本が入っていたので,それをぬらすまいと必死に鞄をまもったところ,自分の下半身はびしょぬれになってしまった。また,左手を思い切り地面についたため,手をすりむいてしまい,痛かった。しかし,標本は無事だったので,まぁ,よしとしよう。さて,明日以降は晴天が続くようだ。週末は東海村できのこ採集である。さわやかな秋空のもとで採集ができるだろう。


10月19日 (火)  Lepiota calcicola

浅井郁夫氏のWebサイト「きのこ雑記」の中の「今日の雑記」10/19の記事で,Lepiota calcicolaについて触れられている部分がある。本種は,「今日の雑記」にも記されているとおり,わたしが昨年報告した(Kasuya and Knudsen. 2003. Mycoscience 44: 327-329)もので,子実体全体が顕著な棘に覆われている(画像1)。現在のところ,東京都のみから知られている菌である。本種の和名について,上記の論文中では「トゲミノカラカサタケ(新称)」として報告していたが,これについて,「本種は胞子が平滑なのに"棘実"という和名は不適切だ」という意見を数名の方からいただいていた。この和名については,子実体の幼菌が,棘に覆われた果実のようなので「棘実」の名を冠したのであるが,確かに紛らわしい。そこで,本Webサイトでは「トゲカラカサタケ」として紹介している。この和名の方が誤解を招かなくてよいように思うので,今後,Lepiota calcicolaの和名には「トゲカラカサタケ」を用いることにしたいと考えている。和名の変更については,特に定められた手続きはないが,できるだけ多くの人に周知できるようにしたいので,何らかの機会に,活字媒体で以上の経緯を説明したい思っている。

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10月18日 (月)  ムクドリ論文

高校3年生の時に調査していたムクドリの冬の塒(ねぐら)についての論文を仕上げている.これは,埼玉などの関東平野中部でムクドリの冬塒の調査をした結果をまとめたもので,山階鳥類研究所の雑誌に,1年以上も前に投稿したまま,査読者からいろいろな指摘を受け,それにどのように答えようか,と考えていたまま,雑事に追われて頓挫していたものだ.ところが,ついに,研究所の所長からも催促されてしまったので,2005年春発行の次号には,絶対掲載するぞ,という強い決心のもと,改訂作業をしていたが,本文と表の改訂は昨日までに無事に終わり,発送することができた.あとは,プリントアウトした原稿をそろえて,編集幹事に提出するだけだ.今度こそ,acceptの返事が来るとよいのだが.ちなみに画像1,2は埼玉県のJR高崎線桶川駅前のムクドリの塒,画像3は千葉県のJR武蔵野線新八柱駅前のムクドリ塒である.

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