Diary 2005. 3
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3月31日 (木)  千葉で

昨日から今日にかけて,千葉市に出かけてきた.昨日は,千葉県立中央博物館で,北方菌類フォーラムの竹橋誠司氏らと博物館の収蔵庫を見学した.青木実氏が,かつて使っておられた顕微鏡(画像1)や,カメラなどの器具が収蔵庫に並んでいた.特に顕微鏡は,単眼で,ごく普通の,学生実験に使うような顕微鏡で,これを使って,あの「日本きのこ図版」をつくられていたのかと思うと,びっくり,である.その後,夕方,千葉大学医学部の構内を歩いたところ,桜の花が咲き始めていた(画像2).昨晩は,博物館の吹春氏のお宅に泊めていただき,今日は,午前中は博物館に行った後,午後からは千葉大学の真菌医学研究センターで,来週の日曜日に行われる,菌学会関東支部会での発表の予行練習をした.予行では,先生方から,スライドのレイアウトなど,いろいろとアドバイスをいただいた.口頭発表の持ち時間は,質疑応答を含めて15分である.スライドは結局,22枚になった.少し多い気もするが,手頃な分量だろう.

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3月29日 (火)  科博な一日

今日は一日中,国立科学博物館の植物研究部で,腹菌類の標本整理をしていた。現在は,パソコン上のデータベースの情報と,実際の収蔵標本が一致するかどうかを,手作業で確認している。これは標本整理の最終的な作業であり,この作業が終われば,名実ともに科博の腹菌類標本は整理された,と胸を張って言える。しかし,かなりの部分で,きれいには一致していない。おや,と思うようなものもある。これからの課題である。今日は,京都から折原貴道くんが来館して,Octavianiaを中心に,地下生菌の検討をされていた。Octavianiaについては,あっとおどろく研究結果もすでに持っておられるそうで,今後が楽しみである。


3月28日 (月)  ハワイ大会

今年の7-8月におこなわれる,菌学会の日米合同大会(ハワイ大会)の講演要旨の提出期限が迫っている。このため,昨晩は,わたしも講演要旨を作成した。テーマは,インドネシアのノウタケ属菌の分類に関するもので,気になる内容は,見てのお楽しみ,ということで,ひみつである。なお,講演要旨のオンライン提出期限は3月31日であるが,ポスター発表のみ,条件付で4月中の提出も可能とのことだ。また,参加の早期登録は4月15日までであり,この日までに登録すると,参加費が割引になる。要旨投稿,参加登録は,いずれもオンラインでおこなわれ,日米両菌学会のWebサイトからアクセスできる。ハワイに住んでいた知人によると,ハワイは,やたらとホコリタケが多いという。今から楽しみだ。


3月26日 (土)  菌懇会

今日は菌懇会の講演会に参加してきた。わたしの分子系統樹の話はさておき,竹橋誠司氏のツエタケ類に関する講演は,学位論文かと思われるような立派な冊子の資料を用いて,3時間あまりにわたっておこなわれた。これまで主に札幌周辺で収集,検討されたツエタケ類の標本について,ひとつひとつ丁寧に記載・描画を加えて考察されており,今後,各地で地域の菌類誌をまとめるうえで,竹橋氏の地道な研究活動は,大きなヒントを与えてくれるだろう。今日は,いわきのS氏の車に便乗させていただき,つくばから川崎まで向かったが,晴れの土曜日の朝ということもあり,首都高は大渋滞だった。三郷JCTから小菅JCTまでのわずか10数kmに,1時間半近くもかかってしまった。しかし,無事に午後1時の講演開始までには会場に到着することができ,一安心だった。

今日は日差しが比較的あたたかく,会場に行く途中,千鳥ヶ淵を首都高から眺めたが,桜のつぼみもほころび,もうすぐ春本番のようであった。


3月25日 (金)  卒業式

今日は筑波大学の卒業式・学位授与式だった。朝から強い北風が吹く中,はかま,着物やスーツできりっと身を固めた卒業生が,大学内を闊歩していた。しかし,あまりに風が強いので,髪の毛をきれいに結い上げた女子学生は,髪型が崩れないように,頭にスーパーのビニール袋をかぶせたり,ターバンを巻いたりして,髪の毛を保護していた(うそです)。自分の卒業式はまだ先のことだし,学位授与式にいたっては,いつになるか,わかったもんじゃない。今年は,農林の菌学の研究室関係からは,学部生1人,院生1人,また論文博士1人が卒業式に出席した。タイ出身の院生さんは,きれいな着物に身を包んでいたが,日本人もびっくり,で,なかなか,日本の着物が似合っていた。

明日は神奈川県の川崎市青少年科学館で,菌懇会の講演会である。札幌の北方菌類フォーラム代表,竹橋誠司氏が,日本産ツエタケの分類に関する講演をされる予定だ。これまでの地道な研究成果の集大成となり,中身の濃いお話が期待できそうだ。ちなみに,わたしもなぜか,分子系統樹の見方に関する解説を,おおせつかってしまった。ツエタケの登場する系統樹を使って,こんな風にみるんだよ,というお話をするのであるが,例によって,講演に使うスライドは,まだ未完成である。今夜,快進撃で,完成するだろう。


3月24日 (木)  鳥の足跡

今年はじめ,茨城県大子町の第三紀鮮新世の地層から,ゾウの足跡の化石がみつかり,この時代のものとしては,日本では福井県に続いて二例目の記録ということで,茨城県では新聞などでも取り上げられた。このゾウの足跡化石が出た場所とほぼ同じところで,今度は鳥類の足跡と思われる化石が見出された。さっそく,発見者の方から,粘土でつくった化石の模型を見せていただいたが,確かに,サギ類や,シギ・チドリ類の足跡とよく似ている。これらの鳥類は,湿地や干潟,砂地で採食するので,足跡が化石として残ってもおかしくはない。しかしこれまで,鳥類の足跡化石というのは報告例がほとんどなく,本当に鳥類のものかどうかなど,原生種の標本や足型などと比較検討して,慎重に判断しなくてはならないだろう。


3月22日 (火)  夕方のニュース

夕方の民法テレビ局のニュース番組は,どうもおかしい.いつもは,夕方はまだ大学にいたりするから,家でテレビを見る時間などないのだが,今は学校の授業がないため,ひねもす,のたのたと,家で文献データベースをつくったり,論文を書いたりしている.このため,ちょっとテレビをつけてみることも多くなっているのだ.

どうも,昔から夕方のニュースというのは好きではないのだが,ここのところ,毎日,特集の時間になると「極上の寿司」とか,「激安スウィーツ食べ放題」とか,「行列のできるラーメン」とか,そんなようなもんばかりを放送している.興味深いことに,この時間のニュース番組の特集はパターン化されていて,あるテレビ局が「極上・激安・行列」をやっていると,別の局は「難病から奇跡の生還を果たした感動の記録」をやったり,また別の局は「密着・片づけのできない主婦」や「あなたの家を空き巣がねらっている」だったりする.ようは,食べ物系・感動系・主婦系・泥棒系など,いくつかの単純なパターンを,局を換えて繰り返し放送しているのだ.試しに,一週間の特集の内容をチェックすると,毎日,どこかの局で「極上・激安・行列」をやっている.毎日毎日,「極上の寿司」ばかり放送しているということは,世の中は,極上であふれていることになりやしないか,と,心配になってしまう.極上というのは,きわめて上,なのであって,毎日テレビで紹介するほど,たくさんはないはずだ.それよりも,日本経済の動向とか,ホコリタケの分類とか,分子生物学の試験が60点以上とれているか,など,重要なことはたくさんある.

前に,新聞の論説記事か何かで「近頃の夕方のニュース番組はワイドショー以下である」などと書かれていたが,ふむふむ,と,納得してしまった.


3月21日 (月)  菜の花

今日は一日中,パソコンとにらめっこして書類作成をしていたが,ずっと家に籠もっているのにもあきてきたので,夕方,春の陽気に誘われて,外に出かけてみた.そろそろ,菜の花が咲き始める頃だと思い,家の近くの川の土手で,菜の花の写真でも撮ろうと思って,あちこちの土手をまわった.しかし,まだ菜の花は草丈が小さく,花も開花しているのがちらほらと見られるだけで,おおかたは蕾の状態だった.今週中には,だんだんと花も咲き始め,川の土手もきれいな黄色に染まってくるだろう.


3月20日 (日)  谷津田ときのこ

茨城県東海村の内陸部は,主に成田層からなる洪積台地と,茨城粘土層と呼ばれる沖積低地が,ちょうどリアス式海岸のように複雑に入り組んだ地形をしている.このため,村のあちこちに谷津地形が見られる(画像1).このような谷津では,洪積台地の上には雑木林やスギの植林地が広がり,谷底の沖積低地は水田として使われているところが多い.しかし,セイタカアワダチソウ群落や放棄水田になっているところも近年では増えている.現在でも谷津田として使われているところでは,成田層の露頭からしみ出す湧水を農業用水として使うため,露頭に沿って小さな用水溝がつくられ,用水溝の周りはごく小規模な湿地状の環境ができている(画像2).谷津田の周辺には湧水が豊富に見られ,それに伴って,モウセンゴケやゲンジボタル,トウキョウサンショウウオなどの,いわゆる里山の動植物が今なお現存している.このようなことから,谷津地形は里山の原風景ともいわれ,近年では里山の自然の多様性を示す上で貴重な環境である,と見直されてきている.

ところで,谷津田というと,動植物のことばかりがクローズアップされがちであるが,実は,このような谷津地形に依存している菌類もある.たとえば,盤菌類の一種,Pachyella violaceonigraという菌は,10年ほど前までは,東海村のこのような谷津地形の,湧水がふんだんにしみ出る露頭(画像3)に,ごく普通に見られた.ところが,本種はこの10年間,めっきりと採集されなくなった.本種は,湧水のしみ出る湿った崖の中の,埋まった腐朽木上に発生する菌である.しかし,この10年ほどの間に東海村では,谷津地形が産廃処理場として造成されたり,谷底がセイタカアワダチソウ群落になって湿地が消えたり,露頭からしみ出る湧水が枯れてしまったりして,本種が好む発生環境が失われていった.このため,本種の発生もだんだんと見られなくなったものと考えられる.このような菌は,日本では里山の谷津地形に依存して分布している可能性があり,谷津田がどんどん減少している現状を見ると,今後,全国的な発生状況のモニタリング等が必要になると思う.

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3月19日 (土)  砂嵐

今日は茨城県東海村に菌類調査に出かけてきた.東海村豊岡の,久慈川河口付近の海岸マツ林は,冬の間の強風の影響を受けて,秋とは様相が一変している.ここは海から直接,強い風が吹くため,砂浜の砂が巻き上げられ,マツの幼樹がすっぽり砂に埋もれて,枯れていた(画像1).昨年11月21日の同じ豊岡海岸のマツ林(画像2)と比較すると,林内には2m近くもの砂が,新たに堆積しているようだ.さらに,昨年の初秋には,きれいなハマゴウが紫色の花を咲かせていたあたりも,今となっては砂山の中に沈没している.わずか数ヶ月の間で,大規模な砂嵐が起こり,かなり大量の砂が動いていることになる.海風の影響のすさまじさを改めて思い知らされた.このように,海岸のきのこや植物はきわめて不安定な環境で生存している.そこにはどのような生存戦略があるのか,生態学的な側面からみても興味深い.

今日は海岸から数十mほど陸地に入ったクロマツ内の地上に,Galerina属の一種と思われる菌(画像3)など,いくつかのきのこ類が観察された.しかし,まだアミガサタケなど,春めいたきのこの姿はなかった.春本番の到来までは,もう少し時間がかかるようである.

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