31<>5<>来月の予定<>明日から11月である.来月は,予定が詰まっていてなかなか忙しくなりそうだ.明日1日から3日まで,三重県に出かけてくる.三重・滋賀県境の御池岳でホコリタケ類の日本新産種が採集されたので,みえ・菌輪の会の皆さんとご一緒に,その生態と分布の調査をする予定だ.御池岳では,ケシボウズタケ属の日本新産種も採集されており,一度行ってみたいと思っていたので,楽しみだ.

三重から戻ってきて翌日の,4日から13日までは,チュニジアに出張することになっている.5日から8日まで野外調査,9日から11日までチュニジア・スースで開催される第8回チュニジア・日本文化科学技術学術会議(TJASSST2008)に参加する.帰国は13日の夕方である.

13日に帰国してからは,研究室の同窓会,日英菌学会の合同シンポジウム,修士論文の原稿取りまとめ,等々と予定が入っており,あっという間に年末を迎えそうだ.<><><><><><><><><><> 30<>4<>ウイルス削除<>しばらく前に,mmvoというウイルスがわたしのメインPCに侵入したことがあった.一応,そのmmvoというウイルスは駆除していたのだが,まだウイルスの残骸が,コンピュータのDドライブの中に残っていた.今日,Dドライブをダブルクリックしても開くことができなくなり,エクスプローラを使っても開くことができなくなった.どういうわけか知らないが,ウイルスの残骸が,また活動を始めようとしているのかもしれないと思い,徹底的に駆除することにした.

幸い,ウェブ上にはmmvoの手動による駆除の仕方がたくさん掲載されているので,それに則り,レジストリを編集したり,コンピュータの復元を無効にするなどして,Dドライブの直下に,このウイルスの一部である隠しファイル「autorun.inf」を発見した.すぐに削除し,再起動すると,正常通りドライブも開けるようになったし,隠しファイルも全て表示できるようになった.ノートンなどのウイルス対策ソフトでは,このmmvoというウイルスがつくった「mmvo.exe」等の主要なファイルは削除してくれていたようだが,全てを削除することはできなかったらしい.今回,「autorun.inf」を削除して,ようやくわたしのPCからはmmvo関連のウイルスが全て除去できたことになる.やっぱりノートンは,あまり安心できないのかもしれない.<><><><><><><><><><> 29<>3<>モミ林で<>先日,いわき市山田小湊のモミ林(画像1)で,ヒメツチグリ属菌を観察した.モミ林内の腐植の上に,エリマキツチグリ(画像2)やシロツチガキ(画像3)が群生していた.子実体を剥がすと,モミの腐植の間に白い菌糸がマット状に広がり,土壌表面の層を白く覆っていた.シロツチガキなどのいくつかのヒメツチグリ属菌は外生菌根を形成するといわれており,菌根の図説も出版されている.モミなど針葉樹と菌根を形成することもあるようだが,腐植層の中をマット状に白い菌糸が広がっている様子は,菌根菌というよりも腐生的な生活をしている菌類にも見える.ヒメツチグリ属菌の外生菌根を是非観察してみたいものだ.

茨城県から福島県南部の海岸付近の低山帯や丘陵地には,かつてモミ林が広く広がっていたと考えられ,茨城県でも東海村,鉾田市,行方市などの海岸線付近には,今でもシイ・カシ等の照葉樹に混じって,モミの木がちらほらと見られる.しかし,いずれもモミ林というほど多数の木が生えているのではなく,海岸付近の低山帯のモミ林は,茨城県周辺ではほとんど見られない.先日訪れたいわき市のモミ林は,ヒノキの植林がしてある山の尾根に残存していたもので,面積は小さいが,大径木が数多く残る貴重な林である.林内では,アカモミタケもたくさん生えており,秋のモミ林を満喫することができた.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 28<>2<>砂浜のイボタケ科<>いわき市の四ツ倉海岸に,イボタケ科と思われるきのこが出ていた.海浜でイボタケの仲間を見たのはこれが初めてだった.波打ち際から少し内陸に入った,ハマニンニク,コウボウムギ,ハマエンドウ,ハマヒルガオなどが生える砂地(画像1)に,きれいなピンク色の子実体が生えていた(画像2, 3).子実体は子実層の直径が10cmほど,有柄で,肉質で直径2-3cmほどの柄が砂地深くに伸びていた.柄からは根状菌糸束がさらに砂地の奥に伸び,途中でコウボウムギの根茎や植物遺体に絡まりながら,最終的には地表から深さ20cmほどのところに埋まっていた流木に,菌糸が取りついていた.菌糸束は表面がゼラチン状の様相を見せ,砂粒や塩の結晶が菌糸束表面の菌糸に絡まりながら,太い菌糸束を形成していた.

海浜のクロマツ林には,マツバハリタケなどのイボタケの仲間が生えるが,今回いわき市で採集した場所は,完全な海浜で,付近に外生菌根を形成する樹木は見当たらなかった.おそらく,このイボタケの仲間は,海浜の砂地に埋まった流木や植物遺体などを腐生的に分解して生活していると思われるが,コウボウムギの地下茎にも菌糸が絡まっているところを見ると,生きたコウボウムギの地下茎の表面も餌にしているかもしれない.さらに妄想すれば,コウボウムギに菌根をつくっていたらおもしろいのだが.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 27<>1<>いわき市の砂浜<>日曜日から今日にかけて,福島県いわき市に出かけてきた.いわき市四ツ倉の砂浜では,たくさんの海浜生きのこを観察することができた.なかでも,コウボウムギやハマエンドウなどが生える海浜植物群落内には,アカダマノオオタイマツ(画像1)が群生しており,総数で50本近くの子実体が確認された.アカダマノオオタイマツは福島,茨城,千葉,静岡,富山で採集されているが,こんなに群生している様子を見たのは今回が初めてだった.この砂浜には漂着した植物遺体や,コウボウムギやハマニンニク等の海浜植物の遺体が豊富に埋まっているらしく,有機物に富んだ,きのこの発生に適した浜なのだろう.

また,ハラタケ属菌(画像2),スナジクズタケ,スナヤマチャワンタケといったきのこも多数見られた.スナヤマチャワンタケは大発生しており,中には子嚢盤の直径が10cmを超える大形のものも発生していた.一方,ケシボウズタケ類の姿は少なく,ウネミケシボウズタケと思われる菌がわずかに見られたのみだった.海浜生のきのこではないが,流れ着いた流木上に,ヒラタケがおいしそうな姿を見せていた(画像3).<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 25<>6<>大学院菌類実習<>今日は筑波大学で大学院生向けの菌類に関する実習が開催される.学内の植物見本園などで,きのこ,植物寄生菌,菌根などを観察・採集し,野外での調査方法や,室内での主として顕微鏡観察の方法などを実習することになっていて,わたしは実習の手伝いと,きのこについての解説をする予定だ.昨日は久々にひどい雨だったが,今日は雨はやんだので,野外観察も予定通り実施できるだろう.今回の実習では,大学院生のほかに,水戸一高や佐和高などの県立高校の先生方も参加されるようだ.

なお,ここしばらく野外での菌類調査に出かけていないが,明日は久々に,福島県いわき市まで出かける予定になっている.いわきでは,腹菌類や地下生子嚢菌類の観察ができそうだ.明日はいわき市に一泊し,月曜日に筑波に戻る予定.<><><><><><><><><><> 22<>3<>胞子の数<>担子菌や子嚢菌が形成する胞子の数は,菌の種類によって決まっていることが多いが,この理由をわかりやすく説明するのは結構むつかしい.染色体の数,減数分裂の仕組みや有性生殖と無性生殖の違いなど,中学三年の理科の内容を理解していれば,基本的には説明できる話ではあるが,現状では,有性生殖と無性生殖,また,体細胞分裂と減数分裂の違いをきちんと理解している中学生は,わたしの周りではそう多くない.生物を選択している高校生でも,減数分裂の理解度はちょっと怪しい.

しかも,菌類の場合,胞子形成のプロセスは普通の減数分裂とはちょっと違うので,さらにややこしいことになる.菌類の生活環は,高校の生物でも副読本などには掲載されているが,あまり扱われることはないだろう.小学生から「なんで子嚢菌や担子菌がつくる胞子の数は4個や8個なのか」という質問を受けて,わかりやすくその仕組みを説明するのに大変難儀した.わかりやすい説明の仕方をもう少し模索してみよう.<><><><><><><><><><> 20<>1<>きのこ観察会<>昨日は東海村できのこの観察会が開かれ,参加してきた.小学生や高校生とその保護者の方,中学校の先生方などを対象に,村松虚空蔵尊付近の海岸クロマツ林でのきのこ採集(画像1)と,公民館の一室を借りて,室内での顕微鏡観察(画像2)がおこなわれた.昨日のクロマツ林ではチチタケ属,キツネタケ属,ベニタケ属,テングタケ属,ムラサキナギナタタケ,ホコリタケ属,コツブタケなどのきのこが多く,食用きのことして優秀な,ハツタケやシモコシも採集されていた.また,アキノキリンソウにはColeosporium属と思われるさび菌も見られた.

これらのきのこは,実体顕微鏡下で観察したり,切片を作成し,光学顕微鏡で検鏡したが,小学生や高校生たちは実に熱心に,胞子や菌糸組織などを観察していた.小学生のきのこを見付ける目は鋭く,見落としがちな苔の上の小さなきのこをたくさん採ってきたりと,きのこ採りや観察を楽しんでいた.観察会の後は,水戸市の水戸二高と水戸一高を訪れ,研究の打ち合わせなどをしたあとに筑波に戻った.なお,今回の観察会をお世話頂いた東海村の皆さんにお礼申し上げます.ありがとうございました.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<><><><> 17<>5<>電気設備の点検のため停電<>今月18, 19日に電気設備の点検のため,筑波大学構内が一斉停電される.そのため,今日夕方から20日朝にかけて,ネットワーク接続も停電による影響を受けるため,インターネット接続ができなくなる.週明けまでは電子メイルの送受信ができないほか,コピー機,レーザープリンタ等の機器も使えないので,書類作成等にも大いに支障を来すことになる.19日は,茨城県東海村できのこ観察会があり,これからその資料や機材の準備をしなければならないが,大学ではできないので,家や勤務先の塾でやらなくてはならない.なお,皆様にはお手数をおかけしますが,至急の用件は,糟谷ケータイまでご連絡ください.こちらからも,この期間はメイルではなく,お電話を差し上げることがあるかもしれませんが,よろしくお願いします.<><><><><><><><><><> 16<>4<>屋上の芝生<>大学のわたしの居室がある総合研究棟Aの屋上は,芝生が敷き詰められている(画像1).晴れているときは,大学構内をはじめ,筑波山,土浦方面,つくば市街地が一望でき,気持ちよい場所だ.この芝生上には,ヒメホコリタケ,ヒダホコリタケなどのホコリタケ類がしばしばフェアリーリングを描きながら発生する.また,ハラタケ型のきのこでは,アカヤマタケ属のきのこが多く発生する.今日は快晴のさわやかな日和だったので,屋上で一休みしつつきのこを探してみた.ホコリタケ類は古い子実体が見られたのみだったが,アカヤマタケ属菌がたくさん発生しており,芝生の緑と可憐な紅色のコントラストが対照的で美しかった.今日観察されたアカヤマタケ属菌は,形態的には2種類があるようだ(画像2, 3).

ところで,芝生が敷き詰められた屋上は地上7階の場所にある.周囲に同じような屋上緑化された建造物はなく,周りは広い空間である.いわば,この芝生は,空に浮かんだ孤立した島である.このような,高所にある孤立した緑地において,気流に乗って飛散する菌の胞子が定着する頻度というのは,どれくらいなのだろうか.気流に乗って飛散している最中に,土壌と植物のある環境に突然不時着した菌の胞子が,ここぞとばかりに栄養を得て発芽し,定着することがあるのだろうか.こういう屋上緑化された環境を使って,菌類の分散・定着過程をシミュレーションすることはできないだろうか.この場所に胞子トラップのようなものを仕掛けて,どんな菌の胞子が風に乗ってやってくるのか調べてみると,おもしろいかもしれない.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 15<>3<>フウセンタケの仲間<>筑波大学構内のシラカシの樹下には,フウセンタケの仲間のきのこがたくさん発生していた(画像1).名前はわからないが,フウセンタケ属菌が多くでているのを見ると,秋も深まってきたのだという感じがする.また,路傍のコケの間からは,株立ちをしたきのこが出ていた(画像2).ナラタケかとも思ったが,ひだがさび茶色で,早落性らしきつばの痕跡のみが柄の上部に見られた.ケコガサタケ属のきのこのようだが,柄はかなり堅く,肉質でがっしりした感じのきのこである.また,落ち葉の下にはムラサキシメジも生えていたが,これはきのこ狩りの対象になっているらしく,構内の道では,ムラサキシメジを両手に抱えて歩く人の姿を見かけた.

大学構内のアカマツ疎林の林床に,秋を感じさせる花が咲いていた(画像3).一瞬,秋の七草のひとつ,フジバカマかと思い写真を撮ってみたが,あとで見直すと,フジバカマではなくヒヨドリバナとかサワヒヨドリといった植物に近いようだ.フジバカマは野生では滅多に見ることができなくなった.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 13<>1<>菌学会の観察会<>この週末は,日本菌学会の観察会が鳥取県の大山で開催されていた.今回の観察会は,菌学会とアマチュアの菌類研究団体有志との共催ということもあり,全国から160名以上の参加者があったようだ.わたしも参加したかったのだが,修士論文のまとめの時期であることや,その他諸般の事情により,今回は参加を断念せざるを得なかった.各方面の方々から,早くより参加のお誘いをして頂いていたが,参加できずに心苦しい限りだ.鳥取にはわたしはまだ一度も行ったことがない.鳥取といえば,菌蕈研や鳥取大学などもあり,日本の菌学研究を語る上で欠かせない場所である.早い機会に行ってみたいと思っているが,来年度の菌学会の大会は鳥取で開催されるので,その際には訪問できそうで,今から楽しみだ.<><><><><><><><><><> 10<>5<>Dictionary of the fungi 10th ed.<>昨日,Dictionary of the fungi 10th ed.が手元に届いた.第10版は,近年の分子系統学的研究の成果をふんだんに取り入れ,771ページにのぼる分厚い改訂版となった.この版では,地下生菌のTrappea, Gallacea, Sclerogaster等の分類に改変がなされている.これら3属の高次分類概念について,Trappeaceae P.M. Kirk(新科の設立), Gallaceaceae Locq. ex P.M. Kirk, Sclerogasterceae Locq. ex P.M. Kirk(命名規約36条1項による非正式名の合法名化)の提案が本書中でおこなわれた.

そのほか,腹菌関係の項目では,主要な属の参考文献が増補されており,たとえばTulostomaを引くと,升屋さんと浅井さんによるコウボウフデの分子系統解析に関する論文(Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo B 30: 9, 2004)が掲載された.また,Lysurusを引くと,なぜか「See Kasuya (Nippon Kingakukai Kaiho 45: 39, 2004; Japan)」と書かれている.ほかにもLysurus属についてはよい文献が出ていると思うが,なぜあえて,わたしの日本語の文献をひとつだけ掲載しているのか不明である.それはともかく,第10版では最新の知見に基づく菌類の分類体系について整理されており,今後大いに参考になる内容だ.<><><><><><><><><><> 09<>4<>居室から<>わたしの筑波大の居室は総合研究棟Aの5階にあり,窓の側にはベランダがついている.最近は室内での仕事や雑事が多く,なかなか野外に遠出の採集にも行けないので,晴れの日はベランダに出て外をしばし,ぼーっと眺めている.ベランダからは,筑波山(画像1, 画像2の左)や宝筺山(画像2の右)などの筑波連山をはっきりと眺めることができる.まだ紅葉には早い時期だが,学内のケヤキ並木は少しずつ黄色に色づき始めており(画像2),秋も本番になってきたことを実感させられる.今年も残りあと約80数日となってしまった.これから,修士論文の作成,11月前半の三重県のきのこ調査,同中旬のチュニジア調査と学会発表などの予定が入っており,一日一日を計画的に過ごしていかないと,すぐに年を越してしまいそうだ.<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<><><><> 07<>2<>Geastrum entomophilum<>最近発行されたMycotaxonの104巻に,次のような論文が掲載されていた:Fazolino, E. P., Calonge, F. D. and Baseia, I. G. 2008. Geastrum entomophilum, a new earthstar with an unusual spore dispersal strategy. Mycotaxon 104: 449-453.

この論文では,ブラジルの森林から採集されたヒメツチグリ属の一新種,Geastrum entomophilum Fazolino, Calonge & Baseiaの形態的,生態的特徴が記載されている.興味深いのは本種の生態で,本種のグレバには,minuscule arthropodsという甲虫類が多数侵入しており,この甲虫類はグレバを摂食するとともに,甲虫の体表には多数の担子胞子が付着しているという.さらに,この甲虫の糞からも本菌の担子胞子が検出されたという.このことから著者らは,このきのこがminuscule arthropodsに摂食されること,また体表に胞子塊を付着させることにより,担子胞子を分散させるという戦略を持っていると考察している.ホコリタケ類やヒメツチグリ類のグレバの中には,甲虫類が確かに侵入していることがある.これらの菌は,風や雨水など,物理的要因により担子胞子を分散させるのが一般的と考えられているが,甲虫などの動物を介した担子胞子分散戦略を持っているものも,案外多いのかもしれない.<><><><><><><><><><> 06<>1<>cirrata or cirrhata (2)<>調べてみると,昨日取り上げたCollybia cirrataのように,ラテン語のcirrus由来の名前を持つ生物の学名や学術用語は結構ある.cirrusは,ラテン語で「巻きひげ」や「巻き毛」を表すことばである.ラテン語の綴りでは「cirrhus」ではない.ところが,C. cirrataと同様に,ラテン語のcirrus由来の名前なのに,綴りが間違っている学名や学術用語が散見される.例を以下に示す:

サンゴハリタケ科の菌 ×Creolophus cirrhatus → ○C. cirratus
海生菌の属 ×Cirrhenalia → ○Cirrenalia
フジツボ下綱 ×Cirrhipedia → ○Cirripedia
巻雲 ×cirrhus clouds → ○cirrus clouds

こんな具合に,菌類だけでなく,動物や気象用語に至るまで,いろいろな分野で同様のミスが起こっているようだ.ちなみに,わたしのJCBのクレジットカードの裏面には,世界的な銀行のオンラインシステムを示す「Cirrus」というロゴが入っているが,このcirrusの由来も,ラテン語の「巻きひげ」や「巻き毛」なのかな??<><><><><><><><><><> 05<>0<>cirrata or cirrhata<>キシメジ科の小型菌のグループ,ヤグラタケモドキ属Collybiaには3種が含まれ,うち2種,ヤグラタケモドキとタマツキカレバタケが,日本からこれまでに報告されている.未発表だが,実は残りの1種,Collybia cirrata (Schumuch.) Quel.も日本に産することが我々の調査で判明しており,現在,発表準備をおこなっている.ところが,論文執筆の過程で,C. cirrataの種小名について問題が浮上したので整理しておきたい.

Index FungorumやMycoBankといったオンライン上の菌名データベースでは,本種の種小名はcirrhataになっている.また,多くの文献でもcirrhataの種小名で掲載されており,現在広く認知されている本種の学名は,C. cirrhataである.ところが,Schumacherによる本種の原記載(Enum. pl. (Kjbenhavn): tab. 1773 (1803))や,Persoonによる記載(Agaricus amanitae subsp. cirrata Pers., Observ. mycol. (Lipsiae) 2: 53 (1800) [1799])では,本種の種小名はcirrataになっている.cirrataがcirrhataという名で登場するのは,Friesの文献(Syst. mycol. (1821))以降である.1821年にFriesが初めてcirrhataの学名を使って以来,これまで広くcirrhataが,本種の正しい種小名であるかのように用いられてきた.

しかし,cirrhataの"rrh"という表記は古代ギリシャ語で用いられる表記法で,ラテン語ではこのような表記法は存在しない.一方,古代ギリシャ語でcirrhus, cirrhatus,またはこれに類似した単語もまた存在しない.すなわち,Friesが用いたcirrhataは,古代ギリシャ語ではなく,ラテン語のcirrusが起源のことばであり,SchumacherやPersoonが用いていたように,本種の種小名はcirrataが正しい.したがって,本種の正しい学名表記はCollybia cirrata (Schumach.) Quel.である.これは,FriesのSystema Mycologicumが菌類の命名法でいかに大きな影響(時には誤った)を与えているかの例であるが,Friesのラテン語はいつも最良とは限らないようだ.<><><><><><><><><><> 04<>6<>筑波山<>今日は茨城県の菌類総合調査で,筑波山に出かけてきた.北側の桜川市真壁町の方から山頂に登った.男体山頂付近のブナ林はまだ紅葉が始まっておらず,ごくわずかに葉が黄色く色づき始めたものがあるくらいだった(画像1).今日の筑波山はきのこの姿は非常に少なく,山頂に登るまでに観察できたきのこはコクサウラベニタケ?などイッポンシメジ属,ナヨタケ属,ベニタケ属,ホコリタケ属などごくわずかの菌だった.山頂付近の林にもきのこは少なく,ミヤマタマゴタケ,Amanita oberwinkleranaなどのテングタケ属菌が目立ったのみだった.ブナ林内の立木には,ツキヨタケかヒラタケの仲間かわからない,小さな可愛らしいきのこがでていた(画像2)だけで,この季節,例年ならブナの腐朽木に普通に見られるツキヨタケやエビタケの姿もなかった.

筑波山は麓の林は湿潤で,夏から秋にかけて多様なきのこが発生するが,山の中腹から山頂は,関東平野の風が直接当たるために,雨が降っても蒸発しやすく,土壌が割合と乾燥しやすいのではないかと思われる.このため,中腹から山頂では,きのこも雨後の条件がよいわずかな時期に集中的に発生し,発生しないときは全くといってよいほど見当たらない.したがって,筑波山でのきのこ採集には気象条件と時期の選定が重要となるようだ.今日は秋晴れのさわやかな天気で,多くの登山客や行楽客で賑わっていた.山頂付近のクサギを気まぐれに撮ってみた(画像3).<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<>.jpg<>170<>127<> 03<>5<>北アフリカシンポ<>今日の午後は日本沙漠学会秋季シンポジウム・北アフリカ乾燥地研究シンポジウム「北アフリカ限界乾燥地域における調査研究」が筑波大学で開催される.筑波大学北アフリカ研究センターの後援でおこなわれるこのシンポジウムでは,同センターが中核となってチュニジア等の北アフリカ地域で進められている,主としてバイオテクノロジー関係の研究について発表される予定である.わたしもチュニジアの菌類調査では大変お世話になっており,今日のシンポジウムでも北アフリカの植生等についての講演も予定されているので,午後はこのシンポジウムに参加する予定.

午前中は,チュニジアの研究機関宛にファックスで書類を送信しようとしていたが,何回か試しても送信できなかった.昨日まで,ラマダン明けで休日だったそうなので,今日はみんなお祭り気分で,仕事をさぼっているのかもしれない.週明けの月曜日にもう一度送信を試みることにしたい.<><><><><><><><><><>